いいことばかりはありゃしない｜忌野清志郎
もう１０年以上も前のことです。
池袋のダンシングクィーンという店で歌いました。
フィリピンパブの小さなステージです。
その時、褒められたのが嬉しかったです。
年上のボーイの方で、「そうきましたかぁ」といった感じでした。
彼はＲＣが好きだったと思いました。
ＲＣを歌う客もままいると思いますが、私くらいだったのかもしれません。
この歌を歌った酔っ払いは。
なんか、嬉しかったです。
嬉しそうに言ってくれたのも、嬉しかったです。
いい事ばかりは ありゃしない
昨日は 白バイにつかまった
月光仮面が来ないのと あの娘が 電話かけてきた
金が欲しくて働いて 眠るだけいい事ばかりで 笑ってりゃ ウラメ ウラメで 泣きっ面かわいそうに あの娘にも逢えないし 手紙を書くような柄じゃない
金が欲しくて働いて 眠るだけ昔にくらべりゃ 金も入るし ちょっとは倖せそうに 見えるのさ
だけど 忘れたころに ヘマをして ついてないぜと 苦笑い
金が欲しくて働いて 眠るだけ～ ～ ～ ～ ～
金が欲しくて
働いて
眠るだけ
そのボーイの方が、その時、そうだったかは私には分かりません。
そこに流れ着いたのが、順風満帆だったからではないような気はしました。
でも、とてもいい顔で言ってくれました。
何故か今でも憶えています。
いい仕事をする人だなぁと思いました。
ホステスも頑張って仕事をしていて、手品が上手だった人のことをよく憶えています。
昼間は魚屋でアルバイトをして、夜も朝まで働いている笑顔の素敵な方でした。
寮で暮らしているホステスは、二段ベッドで、休みも月に２、３回くらいだった気がします。
明るくて楽しいお酒を提供してくれました。
上機嫌で家路につくことができました。
その時の私がどんな状況だったのか、今ではもう憶えていません。
ただ、この歌を腹の底から歌っていた時代があったのは確かです。
人生は、思いどおりにばかりはいかないものです。
思いどおりにいってほしいと願っているのに。
今はそうでなくても、これから先にもそんな時代がくるかもしれません。
その時に、自分にも、ダンシングクィーンのあの時の彼のように振る舞えたらいいと思います。
そんな時が、こなければいいけれど、いいことばかりはありゃしない。
ヒロトも歌ってるんですね。
おれも歌ったけれど。
そんなときが、誰だってあったと思うし、今、そんなときの人だっていると思います。
みんな、頑張れ！
