一億円稼いだデイトレーダーの悲劇 ‐やめられない怖さ‐
この話は私の直接の知り合いではなくて、デイトレについて調べていたときに遭遇したデイトレーダーA氏のブログを元にしている。
情報元のブログはこちらだ。
中途半端な形で終わっている日記ブログの最後の記事のコメントには、知り合い(と推測できる)から、ブログ主が天国へ旅立ったと示唆されることが書かれている。
ブログはアフィリエイトを目的としたものではなくて、読者やSEOをまるで意識して書かれておらず、日記に近い内容なので、本当のことが書いてあると思われる。
ブログに書かれていることから得た情報を組み立てて紹介すると、A氏は40代の独身で、無職だったり派遣社員だったりする。
無職ではあるが、所謂「専業」のデイトレーダーだ。
10年くらい前に専業を始めた時200万しかなくて、しかも全部借金だった。そこから数年かけて先物でコツコツ2000万にした。その後は先物はあまりやらず、ほとんど株で去年がピーク、億近い資産になった。先物はコンスタントに取れていたのだが、株の収益は本当に安定しなかった。最高で一日に数千万単位でプラスマイナスがあった。専業なのに年間ベースでマイナスの年もあった。先物ではありえない成績だ。
億近い金は一時の夢だったんだ。運だったんだ。俺が本当に仕事として稼いで来たのは先物での日銭稼ぎだったはず。だが、一億あったという栄光、そして支払ってしまった1000万の税金、来年以降に繰り越す膨大な損失、それらが邪魔して株から離れることが出来なかった。正直、毎日気が狂いそうだ。過去の資金を取り戻すことができるというのが励みであり、今の俺にとって唯一の慰めなのだ。
だが、株をやめたら、もう億の資産に復帰することはないだろう。先物で日銭を稼ぐだけになるので、2000万に戻すのだって数年かかるだろう。そう考えると踏ん切りがつかない。今年に入ってから常に鬱々として楽しむ日が無く、酒におぼれるだけの日々だった。こういう荒れた生活を何時までも続けられるわけじゃない。悔しいが過去を断ち切るしか無い。そんなことはわかっているんだ。。。。
最初のタネ銭はどうやら借金だったようだ。
そこから、日経平均先物のデイトレを中心にコツコツ増やして、株のトレードでその後大きく資産を増やし、ほぼ1億円にまで接近したのだが、その後このような記事がかかれている。
一億から350万へ資産が減り資金不足から200万借金した後、落ち込んでいたし酒びたりだった。そして焦っていた。とにかく一千万二千万に戻さなければ、と。結局大きく負けた後は心が復帰するのにすごく時間がかかる。今月はもうすべて終りだと思った。切り抜けてみると何故こんなに焦っていたのだろうと思う。
先物で数千万になって、その後借金生活に入ったことがある。今回は株で一億になって、資金のために借金をしたが、自己資金がないわけじゃない。少しマシだ。そのうち一億になるだろうから焦らずに、持越しは現物に限定してやっていこう。払ってしまった税金や繰越損失をなんとかするという考えも捨てよう。
死にかけて憑き物が落ちた気がする。
二部構成のブログの一部が終わった後で、自殺を試みている様子が書かれている記事がある。以下がその抜粋。
あの時近くの橋の下までロープを持っていったけど、死ぬことがどうしてもできず、その後安い派遣で糊口をしのぐ日々でした。が、今回コロナのせいでその命綱も絶たれた。残っているのは76万、追加でカードローン申し込んだので合計90万でそのうちローンが60万となります。国の緊急小口資金20万も申し込んだし、総合支援資金45万も申し込むつもりです。
税金・保険料の未払いもあるし、数年前から先物でジャンプし続けていて400万の税金も未払いだが、全く払える算段がつかないです。来年もジャンプ予定ですが、これも証券会社の証拠金によっては出来なくなる可能性があり、そうなると支払うしかないですが現状到底払えません(国税なので破産できません)
とにかく生き残りだけをかけて、そしてそれがダメなら死ぬしかない。今度のデイトレ生活も多分ダメなのだろうが、ダメだった場合に今度こそ死ぬ決断が出来るだろうか?
その後の2部の記事はこの記事が最後だ。
93万残った。SQ終わった後またやるか
中途半端な形で終わっているが、初めに紹介したコメントと重ねて想像できてしまう哀しい末路が、そうでなければいいと心から思う。
このような記事もある。
30万ほどかき集めて、家賃もなにも支払わず、オプション勝負をした。なんとか200万まで増やしたが、働きながらオプションはつらい。そして金曜日に仕切ってしまったが、結局朝方暴落してきたようで、持っていればもっと儲かったという思いでとてもつらい。
年末までに一千万を目指したい。
ハイレバで死ぬか生きるかの勝負で精神をすり減らしたのだろう。
200万円博打で勝てば十分だと思うが、止められない。
依存症では止められず。
なんとしても取り返したいという気持ちは強烈だから止められず。
止められないということについて、以下の記事も参考にしてもらえればと思う。
ブログを読んでいくと、彼が酒に溺れていく様子が分る。
結局一度儲けてしまったのが悪かったのだ。一億と言う金を持ってしまったこと、それも何度も復活をして最後にそうなった。だから自負も強いし、思い入れも強い。だが、それがどうだ、今は何もできない男として一生を終える状況になっている。物語なら一世一代の博打に賭けて、満足して死んでいくというのがある。が、そうではない。一生は一度だから決断して後悔した方が良い、というのは最後に笑えた人間だけだろう。結局のところ人生最後に幸福でないと、人生を肯定できないのだ。本当は死にたいのだ。高いところに居ると飛び降りたいのだが、ほんの一歩が進めない。毎日死ぬことばかり考えている。仕事をしている最中はまだマシだ。休み時間や帰ってきてから、憂鬱すぎて本当に死にたくなる。土日なんて一日中飲まないとやってられない。だれか殺してくれ。
一番安く買えるような酒を一日でかなり飲んでいることを書いてあった記事もあった。
誰だって経験があるだろうが、酒がなくてはやっていられないということはあることだが、それが毎日では身がもたない。
去年から資産が減り続けて、かなり酒量が増えた。今年になってほとんどの資産を失ってからは、4リットルペットボトルの焼酎をコーラで割って安上がりに酔っ払っていた。勿論量は普通じゃない。心だけでなく、体もそこまで悪くなっていて、色々末期的だな。
デイトレ中毒をこじらせてアルコール中毒になったのではないだろうか。
そうでなければいいが、突然ブログの更新が途絶えた原因が、二度とブログが書けない状況になったのだとしたら、それは酒とストレスによる身体的なダメージによるのではないだろうかと思わずにはいられない。
取り返してやろうという気持ちは止められない。
私自身経験があるが、デイトレで思わぬ損失を作った夜は禁止していたことを破って先物のナイトセッションをしようと考えたりする。
つい最近そんなことがあった。
今の私は投資に回せる金はほとんど現物株を買っているので、信用取引しか出来ない状況だ。
つまり、借金をしてやろうとしたということだ。
デイトレで負けていなければ現れない発想だ。
自制できたものの、チャートを見てみると、やっていたならばここでエントリーしていて、その後のチャートは予想通りになっていて、10万円稼げていたのに、と思うと、そこでまた損したような気になって、それを取り返そうと思ってエントリーしてしまう。
ポジポジ病やデイトレ依存症のど真ん中に居ると、こういうときに迷わず借金してエントリーしていることだろう。
A氏はそうであったことが、ブログからは伝わってくる。
1億円まで増やしたのに、1千万円もの税金を払ってしまったのに、こんなところで終われるかよ・・・。
払った税金より少なくなった資金に納得できないのだろう。損失回避バイアスやサンクコストバイアスが絡み合ってなんとしても取り戻そうとして、ハイレバのギャンブルトレードを繰り返しているのが想像できてしまう。
その後は税金を何年かジャンプして逃げているとのことで、二度と栄光を取り戻すことは出来なかったようだ。
2018年40歳でブログを書き始めていたときは、350万円の資金があったのだ。30万円を200万円まで増やしているときもある。
だけれど、終わるまでやめられない。
350万円貯金があれば、中年であれ、正社員は無理であれ、計画的にことを運べば、贅沢は出来ずともそれなりに生活を安定させることもできただろうに、他の選択肢は見えなくなる。
これがデイトレの一番の怖いところだと思う。
要するにギャンブル依存症になってしまい、デイトレをすることしかできなくなっているということだ。
一度1億まで増やした実力が自分にはあると思えば尚更だろう。
もはや意思では制御不可能。
デイトレをするように脳が命令を出すイメージだ。
何よりも優先すべきことがそうであってしまう。
ギャンブル依存症は、自分の意思では止められないから怖い
一昔前は毎年夏になるとパチンコ屋の駐車場で、車の中に置き去りにされた幼児が熱中症でなくなるという痛ましいニュースがあった。
母親を殺して金を奪ってパチンコ屋へ行ったという事件もあった。
鬼畜の所業だが、恐らくギャンブルと接点がない人生であれば、子供を大切に育てていた親だったかもしれないし、親孝行した子供だったかもしれない。
逮捕された後の取調室での印象は、どこにでもいる普通の市民で、凶悪な感じのない人物だったりするそうだ。
自分では止められなくなる。
ギャンブルによりマインドコントロールされてしまう。
デイトレが依存症となるとやめられない。
それが一番怖い。
私は地獄の入口との岐路に立ったことがあるから、暗い景色の想像がリアルに出来る。
その道へと進まなかったのは、ギャンブルをしないで貯金をしてきた誠実で優しい家族に、精神的にも破産を免れるよう経済的にも助けてもらえたからでもあると思う。感謝してもしきれない。
孤独になると依存症の度合いは強くなりがちだ。
私は離婚して子供と会えなくなってからのことだった。
清原はシャブ、山口(元TOKIO)はアルコールだったが、彼らだって、「良くないことだ」「やめたい」と、心底思っていたのは間違いないだろう。
しかし、行くところまで行かないと自分の意思では止められなかった。
忘れてしまいたいから、没頭し、没頭しているうちに繰り返されて、脳の報酬回路が強化されて、依存症になる。より強い刺激を求めるようになるから、それがデイトレならば、ハイレバで大きな金額でないと満足できなくなる。
大王製紙の元会長井川は、106億円バカラで溶かしている。
東大を卒業する頭脳の持ち主でさえ、止められなくなる。
ギャンブル依存症とは本当に恐ろしい病気だ。
特に金にだらしないわけではない普通の金銭感覚の持ち主が、気が付かないうちに、泥沼にはまって、抜け出せなくなる。
そういうリスクがデイトレには潜んでいることを忘れないようにしたほうがいいだろう。
悪循環に嵌ると、現実逃避のために酒やクスリに手を染め、新しい依存症も併発してしまう。
進行が進むと抜け出すのは容易でなくなるのは、全ての依存症に共通していることだ。
ポジポジ病を自覚している人は本当に気をつけたほうがいい。
専業デイトレーダーとなり1億円稼いだのに、それを全て溶かすまで止められなかった人がいる。
1千万円だって十分な貯金なのに、毎日苦しみながら、やめられず、転げ落ちていった。
A氏は、他人を傷つけたり騙したりする悪い人ではないきっと優しいいい人だったと思う。
真面目だったから、犯罪も犯さず資金を溶かしていったのだと思う。
そんな哀しい話は、世界中のどこにでも転がっている。
あなたのしていることの一寸先は闇かもしれない。