サンクコストの呪縛(サンクコスト効果)とは
英語では、「SUNK COST FALLACY」で紹介されることが多い。
SUNK はSINKの過去形だ。
つまり、「沈んだコスト=埋没費用の誤謬」
因みに、誤謬の意味は、「間違えること」である。「間違った考え」でもいいかな。
じゃあなんで誤謬でなくて、呪縛なんだと言うと、最初に世に広めた人が考えたのだろうけれど、上手いなと思う。
誤謬より呪縛がよりイメージがつきやすい。読み進めていけば言っていることが分るだろう。
さて、「コスト」は日本語化しているが、費用や経費のことだ。
そして、このコストには金銭としての費用だけではなくて、つぎ込んだ時間も含まれる。
単に長さとしての時間であってもサンクコストには影響を与えるが、その時間が頭を使ったり身体を使ったりという使い方で消費した時間であれば尚更影響度は強くなる。
調査や作業に費やした時間はそれが会社であれば=人件費=金銭という考え方ができるだろうから強化されるというのは納得いくだろうが、個人の場合もそうだ。
苦労して使った時間、情熱、時には愛情だったりという感情が上乗せされるとより一層「呪縛」がきつくなるのだ。
言っておくが、サンクコストのサンクは過去形。過去は二度と戻らない。
幾ら努力しようと、更に金をかけようと、戻ってこないコストがサンクコスト。
だから、更に努力したり更に金を使ったりして取り返そうとするのは、超ナンセンスなこと。
貴重な自分自身の人生と財布の中身をそれ以上消耗しないで、スパっと損切して忘れるのがよろしい。
何故なら、過去は戻らないしサンクコストは戻ってこないから。
でも、未来は違う。
過ぎ去った過去よりも、これからのことの方が大事だろ?
コンコルド効果
サンクコストの話を説明する記事によく出てくるのが、コンコルドの話。
日本のサイトやブログで書かれている記事にもよく書かれているが、英語圏のネットでもよく書かれている。
コンコルドとスキー旅行の話が多いな。あとつまらない映画と育成ゲームの話もあるか。
コンコルドを知らない世代は相当若いと思う。オッサン連中は一度は乗ってみたいと憧れたもんだ。カワイイ子供だった頃に。
子供の頃、世界一早い乗り物は何?という小さくて分厚いクイズの本には必ず出てきた。クラスでなぞなぞの本とか、心霊写真の本とか持ってくるやつがいたものだ。どうせ今の時代はガキだってアプリなんだろう?ブロックされちまえっての。
世界一速い乗り物だったのがコンコルドだ。
今はもう世界中の何処の国の上空も飛んでいない。
だが、本当はもっとずっと早く飛ばさないという判断をしなくてはいけなかった。
でも、出来なかったのだ。
何故か?サンクコストの呪縛に絡まってしまったからだ。
バイアスは個人が株のトレードをするときだけ出てくるやっかいなものではなくて、集団や組織時には国までをも狂わせることがある。
国家規模でもっとも人災を出してきたのは、戦争だ。負け戦が見えていても今まで費やした莫大なものや途方もなく失ってきたものがあるから、後に引けない。
最後は玉砕か。死んでいった仲間の為にか。だが、死んで何になる?
さて、コンコルドに話を戻すが、250機売って漸く元が取れるという計算が開発段階からあって、そんなに売れやしないという考えも当然社内にはあった。
だが、既に開発費は数千億円という途方も無い金額に膨れあがっていた。
だから、これ以上損失を出さないように損切りをしなければいけないのだけれど、逆に、ここまで費やしてきたものをどうして無駄に出来るだろうか。いや、絶対無駄に出来ない。というサンクコストの呪縛に絡まって、大負け大損失確定地獄に向かって突っ走ったわけだ。
個人の出来事なら、借金を重ねて破産、一家離散、富士の樹海がうっすらと浮かんで見える規模の損失を広げに(頭の片隅には撤退すべきという考えも常にあったのに)走り続けたようなもんだ。
これは損失回避バイアスも絡まっているだろう。金もさることながら、今までやってきたことを否定したくないから。
コンコルドは実機はたったの16機しか売れなかった。
250機でやっと採算が取れたとしたら、どれほどの損失を垂れ流してきたかって話だ。
セスナの250機じゃないからな。旅客機だから。
コンコルドが売れないってのは分っていたはず。
音速で、ロンドンとニューヨークを東京と大阪を移動する程度の時間で移動できればいいってもんでもない。
燃費が悪くて、騒音が凄くて、座席数が少なくて、販売価格は高くてってこんなもん買う航空会社は商売の下手なバカだわな。
エールフランスと、ブリティッシュ・エアウェイズがだらだらと赤字を垂れ流しながら運行していたのは、英仏共同開発でバックに国であって税金があったからだし、所謂国の威信的なものも、サンクコストとしての邪魔に拍車をかけたことだろう。
アベノマスクだって、少なからずサンクコストの呪縛があったと思うけれどね。
自分の金じゃないから突っ走れちまうわけよ。
当事者より第三者の方が正しい判断が出来ることは多い
連中にこそ追証が必要だったな。
強制退場のリミットをサンクコストの呪縛を受けていない第三者が作るべきだった。
ところで、倒産しかけた会社を外部から招へいした経営者が立て直すなんて話はよくあることだが、これだってサンクコストが関係している。
外からやってきた奴は、今までの現場の苦労なんてまったく気にしないから。
そんなこと知らないわけで、ただ紙に書いてある負債の数字だけで判断することができる。
要するにサンクコストの呪縛が心理的にないから、足を引っ張っている要因をスパッと切れるってわけだ。
株式投資におけるサンクコストの呪縛
人間は否定されるのを嫌がる生きものだ。自分でも他人にされても。
余談だが、頭の中お花畑のナオンを口説くときには、絶対に否定してはいけない。
例えば上司に怒られた話を愚痴っていたとして、上司が怒るのも無理ないわ。と内心思ったとして、「うん。そうだよなぁ、ホント酷い奴だな。災難だったよね」と優しさを演出しながら同意しておくのがよろしい。
今一度自分の目的は何か考えよう。正しいことを言ったが故に、果実を得られないなんてことにゆめゆめならぬように。
否定して、正しいことを諭し、説教でもしたなら、ゲームオーバーだな。
テクニシャンだったとしても、口説いている時点ではその技は使えない。
バカになって相手に合わせておくのが大事だ。
これは、何も口説くときだけでなくて、上司や客とのやり取りでも使える。
短気は損気。
そうそう、あの天才トレーダーBNFもインタビューでこう言っていた。
それまでの逆張り戦法を捨てて、一転していた上昇相場に合わせて「バカになって買っていきました」とな。
ナオン相手なら、「そうだね」「わかるよ」
上司と客なら、「おっしゃるとおりです」
とりあえずバカになって順張りしときゃいいんだよ。
でもさ、否定されたくないのは、何もナオンだけではない。
みんなだってトレードで経験があるはずだ。
損切への抵抗感
損切というのは自分がとったポジションを全て否定する行為であって、その執行を第三者ではなくて、サンクコストの呪縛を受けている当事者が行うから難しい。
コンコルドのところの経営者の話で例に出したが、第三者はサンクコストの呪縛を受けてないからあっさりできる。
だけど自分のこととなると、この株の負け方シリーズで再三伝えてきた各種バイアスが邪魔する上に、サンクコストの呪縛を受けているから、自分では執行が出来ない。
ここまで我慢したのだから、今更こんなところで損切できるかよ・・・。
*各種バイアスは下記記事で詳しく書いてあります。
無駄な抵抗は止めて降伏しよう
とどのつまりは、第三者の執行までできなくて伸ばしてしまう。
私ははやっちまったな~。
だからみんなにはやってほしくない。
何をって、追証の点滅と、そこで漸く執行する遅すぎるロスカット。
損を認められない。
失敗を受け入れられない。
自分が犯した間違いを認めて、自分で作った損失を確定できない。
冗談じゃない!もう後には引けない!こんなところで終わりにできるかよ!!
投資にかける金はたいていの個人にとっては大金だ。
普段の買い物で使う金とは桁が違うもんだ。
膨大な時間だったり金だったり手間隙かけてきたから、それを続けることが無駄であって、いや無駄どころか自分にとって損害をもたらすと分っていても、使ってきたコストを無駄にしたくないために、またそのコストが大きすぎるが故に心理的な抵抗があってだらだらと続けていくのがサンクコストの呪縛で、だらだら続けた結果、倒産なんてことになるのは割りとよくある話。
事業の投資はそうだが、ネット証券を使った投機や投資、トレードだってそう。
研究や調査にかけた時間が長ければ長いほど、ナンピンしてつぎ込んで損失が嵩むほど、塩漬けにしている時間が長いほど、その損失を認めて切るのが難しくなる。
勿論、ケースバイケースで一概には言えないし、もう少し耐え忍んだら明るい未来が見えてくるときもある。
だが、もし、自分が、第三者的な客観的な視点で、サンクコストの呪縛から離れて自分のポジションを検証して、勝ち目がないと判断しているならば、思い切ってそのポジションは切ったほうがいいだろう。
贈る言葉
サンクコストの呪縛があるから、時間をかければかけるほど、ナンピンすればするほど、損切が心理的に難しくなってしまうことを憶えておこう。
早めに手を打って、そんな苦しみと決別して、さぁ次行こうか!
サンクコストは二度と返ってこない。
ユーは呪縛を断ち切って、過去は捨てちまいなよ!
明るい未来のために、身軽になることをおすすめする。
ぎゅうぎゅう詰めだと何も入れられないけれど、スペースが出来たら、そこに思わぬ幸運が舞い込んできたりするものさ。
GOOD LUCK!
追記、
サンクコストの呪縛とは上手い表現を考えたと思うが、千葉ディズニーランドとしないで、東京としたのは改めて上手いなぁと思う。
もっともあのネズミ帝国は、ほとんど東京と言っても差し支えない東京寄りの埋立地に作られているけれど、成田空港を新東京国際空港とするのはやりすぎじゃないかと思うんだが。
そういえばネズミ帝国の年間パスを持っているというナオンにブロックされたことがある。
何をブロックされたかは想像に任せるが。
事実としてはナオンが誤認していて、私は本来正しいことをしていたのだが、そんなの関係ねえ。ナオンに理屈は通用せんのだ。私のエラーということになる。
ナオンは気分と損得でなぎ倒していくことを、みんなも学んできたことだろう。
私がそのことを友人に愚痴ったら、「あんなものにウツツを抜かすナオンは頭の中はお花畑なんだから無駄にする時間が省けてよかった。とっとと次に行こう」とさ。
私はナオンの顔はとある女子アナに似ていてタイプだったので損失回避バイアスが出てきていたが、無駄を省けてよかったと気がつき、元気が出たよ。
実はこんなところでもサンクコスト効果がちょとっと顔を出していたと思う。
私は文字をスマホで打ち込むのが苦手なんだ。
苦労して打ってきた分の労力、目の酷使、時間、に対するサンクコストへの抵抗…。
ところで、年上の友人の励ましは嬉しいが、オンナでなくていつだってナオンと言うところがまたいい。
ザギン、チャンネエ、パイオツといった言い回しは若い世代は使わないだろうな。
私も使わないが。
おっと、年間パスを買っている読者がいないことを祈る。特に貴重な女性読者に逃げられたくないし。
もっとも、昔の私は、お花畑のようにカラフルなJRAの回数券が常に財布に入っていたけど。
まぁネズミより馬の方が高尚な気がするから私の勝ちだろう。
頭の中は花吹雪が舞い散っていたしな。勿論、花びらは全部お札に見えていたけれどさ。
競馬も今思うとサンクコストの呪縛だったと思う。
嫌なことと、損したことは、引きずらないのに限る。
とっとと忘れて、次行こうか!