株式投資に潜むアンカリングの罠|誤った判断と利用する機関

株の負け方

アンカリング効果とは?

「トレードと認知バイアス」が実はテーマになっている株の負け方シリーズだが、今回はアンカリング効果についてお伝えする。

トレードを行ううえで邪魔となる心理的なバイアスとして、確証バイアス正常性バイアスなどを取り上げてきたが、アンカリングも危険だ。

私はこのアンカリングの所為で、大損ぶっこいたことがあるので、株の負け方の参考になればと思い書くことにした。

先ず 初めにアンカリング(アンカーリング)効果の定義だが、ウェキペディアにはこのように書かれている。

「アンカリングとは認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のことをさす。係留と呼ばれることもある。」

数値、と書いてあるが、私の経験からすると過去に自らに強く関与して起きた事象も含まれていると思う。

「高値覚え」「安値覚え」

株の教科書に出てくる内容としては「高値覚え」「安値覚え」が、アンカリングの例題として取り上げられていることだろう。

チャートを見て、または自分の経験で、その先行指標が、自分の中で過去の高値や安値の基準点になってしまう。

下降トレンドなのに、アンカーされた高値と比べて、割安と思い、またいずれその高値までは戻ると考えて、持ち株を手放せない状態が高値覚え。

アンカーされた安値と比べてまだ高いと思って、買いたいと思っていた株を買いそびれてしまい、上昇トレンドの波に乗れない状態が安値覚え。

いずれも、先行指標が基準となって、そこに縛られてしまっている。

将来もそうなるとは限らないのに。

自分が触っていた銘柄だとより危険

高値安値の水準は、ほとんどの個人投資家はチャートで判断するだろう。

そうやって得られた過去の情報が、アンカーされることになる。

以前深く関与していた銘柄が下がってきたときに、その以前のときにに反発した株価付近を底値と思う強さは、一度も触ったことのない銘柄のチャートを見ている以上にバイアスが強まり易いと思う。

アンカリング効果による失敗例

私が安値覚えで逃した大きな魚の一つが2020年1月の「 enish 3667」で、ずっと監視していて、当時の回せる資金の全てをぶっこむ予定だったのだが、慎重になりすぎて機を逃したのだった。

12月から1月にかけての株価の推移は、売り枯れを示唆していて、下値の試しも終わって、反転の手前という認識もあったし、夏場からの流れでも十分過ぎるほど下げたと思いつつ結局買えなかった。

それは、個人的な経験によるアンカーが強烈だったからだ。

enish 日足チャート

enish 日足チャート

私の中でそのときにずっと引っかかっていたのが、400円という株価で、そこまで落ちる(落とす)という思いが強かった。

その理由はこちらの2019年のチャートだ。

直近の安値は2020年3月に着けた303円だが、コロナの特殊要素で、そこまで下がらないと思っていたけれど、この400円が印象強く残っていたのは、その時に大きな含み損を抱えていて、株価の推移を毎日見守っていたからで、より深く記憶にアンカーされたのだと思われる。

アンカーされた株価400円

アンカーされた株価400円チャートの左の方750円付近で出来高急増があるが、そのときに万株買っていて、それは短期トレードだったのだが、このチャートで見ると高値だが、半年前は1,000円以上あったのだ。

漸く下げ止まって、この出来高急増は初動のようにも見える。2年前は3,700円を超えたこともあったわけだし。

ということで、アンカリング効果で、そのときは逆の高値覚えだね。

その後の下落局面で買った。予想に反して止まらない下落の中で、買い下がっていって、ワラントも喰らったりして、えらい目に遭っていた。

だから強烈に記憶に残っていて、400円の安値覚えのアンカー効果があったわけだ。

思い込みは危険!バイアスに掴まって逃げ遅れないように!

大勢の市場参加者の総意によるアンカーリングなのか、価格帯出来高の影響なのか。多くのトレーダーが意識する価格帯で、そこがボーダーラインになって、高値だったり安値だったりでターンしてくることは結構ある。

しかし、そこで止まらないで、突き抜けることもあるわけだ。

そういうときに、ロスカットしないで持ち続けるとヤバい。

チャートは過去しかなくて、未来は誰にも分らない。

現代市場はアルゴが蔓延っていて、行き過ぎるところまで突っ込んで株価を動かすことがあるから、下手をすると追証で退場する羽目になる。

私はバイアスに絡まって、動けなくなって、退場した経験がある。

みんなにはそのような辛い思いをしてほしくない。

自分の中でアンカーされた基準の価格が高値や安値になって、これは十分過ぎる高値と思って空売りしたのに更にぐんぐん上がっていくなんてことはあるだろう。

現実は自分の基準を超えて動いているのだが、アンカーされた基準が邪魔して、ロスカットやドテン買いが出来なかったりする。

安値も然り。ここらが安値と思って仕込んだはいいが、更に下がってしまったけれども、自分の中では十分安いという基準が出来上がっているのだから、それ以上は下げても知れているだろうと思う。

だからここは損切りでなくて、ナンピンだろうといことで買い増した。

そして、そこでヨコヨコしている株価を眺めてこれは底練りだなよしよしなんて思っていたら、そこからストンと底が抜けてしまったとか。

アンカリングが邪魔してその場に応じた適切なジャッジが出来なくなってしまっている。

逆に先に挙げたenishの私の買いそびれのように、毎日監視して絶対に買おうと狙っていた有望株なのに、自分の中でアンカーされた安値と比べたらまだまだ高いと思って、手控えているうちにあれよあれよとぐんぐん上がっていってどでかい機会損失を作ってしまったというのもあるだろう。

過去のアンカーを捨て、現在の市場の値動きを受け入れる

過去のチャートを見ながら未来をほとんどのトレーダーは予測してポジションを取るのだが、未来は誰にも分らない。

自分の未来であれば努力が道を拓くこともあるだろうが、株のチャートには努力したところで、影響を与えられないのが、一般的な個人投資家だったり投機家だ。

仮説を立てたが、そのとおりには動かないこともあるのは当たり前のこと。

BNFやCISは兎に角損切りが上手いのだと思う。

彼らが大きく稼いだ時期は今のようにアルゴが猛威を振るっている時代ではなかったとは言え、デイトレであれだけの成績を上げるのは並みの人間には不可能である。

相場のことは相場に聞けとばかりに、読みが外れたときは、スパッと切ることが出来なければ、あれだけのロットを個人で張っているのだから、とっくに退場していただろう。

しかし、それが普通に出来ないのが、普通の個人投資家だ。

それが初心者のうちから出来る人は、特殊能力の持主で、トレーダーに向いているということになる。

もっとも、上級者には出来て当然のことだけれど、その上級者になるまで生き残らずにほとんどの初心者は到達する間に相場から去って行ってしまうということを認識した方がいい。

アンカーされた株価に戻ると思うバイアスがあって、損失回避したいバイアスがあって、アンカーされた株価を正しいと思う情報を無意識に集める確証バイアスがあって、たぶん大丈夫と思い込む正常性バイアスがあるから、損切りは難しい。

アンカリング効果を利用して罠を作り、デイトレイダーを捕獲する

デイトレはそれらが凝縮されていて、一瞬のうちに判断して、バイアスを断ち切って執行しなくてはならない。

だから、感情(=バイアス)のある人間には難しい。

大口は個人のアンカリング効果を利用した分足の波を意図的に作ってくるときがある。

ここまで上がって、そこから落ちてきて、ここまで上がって、また落ちてきて、また今度ここまで上がってきたから、また落ちるだろうと考えた個人が沢山いて、小口のショートが沢山エントリされる。

板読みすると、いかにも落っこちてきそうな動き方や、注文数が並んでいたりする。

よしっ次の下落は値幅取るぞ!とばかりにショートをエントリする個人が多数。

カモがネギしょって十分やってきたところで、ジェット噴射でカチ上げる。

個人にアンカリングされていた高値を一気に超えたけれど、アンカーと比べるとあまりにも高すぎるから、アンカーの株価より下までは戻ってくるハズ。

よし、ここは、損切でなくてナンピンのチャンスだと思った個人が、その日の高値でのヨコヨコでショートをエントリする。

こいつはナイアガラの手前に違いない(含み損を解消したいから、そう思いたい)。

養分が溜まってきた頃合いを見計らって、下落ではなくて、更に一段上へと大口はぶち上げる。

弱小個人は含み損が膨らんで、これ以上上げられたらヤバすぎるという恐怖に駆られて損切りする。

あれ?あれ?あれ?

損切した途端に、急落が始まる。

悔しくて、損を取り返したくて、今度は下げ止まったと思ったところで、ドテン買いをする。

そうしたら、そこからストンと下がって、朝予想した通りの陰線で終わって、損切で終わって、憂鬱な気分でその日を終え、その損失を取り返そうとスクリーニングを開始する。

ポジポジ病だと、悪循環は終わらない。

なんて日々を送らないように、私は、大口(AI、アルゴ)有利の土俵で戦うデイトレは止めた方がいいと思うんだな。

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