孫子の兵法「敵を知り己を知れば 」をトレードで正しく活用するには?

孫子の兵法 投資のヒント
孫子の兵法

孫子の兵法「敵を知り己を知れば百戦して危うきにあらず」を株のトレードに活かすには?

孫子の兵法を投資やトレードに活かせないか?そう考える人も多いと思います。

正月休みに帰省した際に、本棚で見つけて読んだ本の一節を紹介します。

敵側の国情、人情、風俗などを熟知し、それに立ち向かう見方を全面的に掌握したつもりでも、それが主観的にすぎ、一面的であればなんの役にも立たぬであろう。なにより危険なのは、「彼ヲ知リ己ヲ知レバ・・・」という言葉だけを知って、その気になってしまうことである。  *「孫子の兵法の使い方」 三笠書房 より抜粋

毛沢東もかつてその著書「矛盾論」のなかでこう述べている。問題を研究するには、主観性、一面性および表面性を帯びることは禁物である。一面性とは問題を全面的には見ないことをいう。あるいは、局部だけを見て全体を見ない。木だけを見て森を見ないともいえる。孫子は軍事を論じて「彼ヲ知リ己ヲ知レバ百戦シテ危ウカラズ」と語っている。ところが、わが同士の中には、問題を見る場合、とかく一面性を帯びるものがいるが、こういう人はしばしば痛い目に遭う。  *「孫子の兵法の使い方」 三笠書房 より抜粋

私は買った記憶がないので、父が買ったのでしょう。今はもう刷っていません。

「敵を知り己を知れば、百戦して危うきにあらず」の解説の切り口として、上記抜粋の点をクローズアップしていますが、この本の面白いところだと思いました。

この一節の意味は理解していても、この点には気がつかない人は多いのではないでしょうか?

振り返ってみると私はそうでした。

投資、投機に焦点を当ててみてもそうですし、もっと広げて、会社や社会でのサバキにおいてもそうでした。もっと昔まで遡ると、ガキの頃の学校や家庭でのサバキでもそうでした。

この点・・・については後ほど掘り下げるとして、先ずは一般的な解釈からおさらいしましょう。

「敵を知り己を知れば、百戦して危うきにあらず」の意味

孫子の兵法は有名な本で、私の感覚からすれば、解説本くらいは読んでいて当然と思いますが、有名とはいえ読んだことのない人の方が実際のところは圧倒的に多いのでしょう。

世の中には思い込みと自分の視点だけで断言して押し付けてくる奴が結構いますが、周りは迷惑しますし、時に不愉快な思いもします。他人の振り見て我が振り直せ。自分も気をつけるようにしています。

ということで、実際のところ読んでいない人の方が圧倒的に多いとは思いますが、この「敵を知り己を知れば、百戦して危うきにあらず」は聞いたことのある人が多いのではないかと思います。腑に落ちるからでしょうか、ビジネス本などでよく引用されています。

兵法ということで、侵略戦争における指揮官向けの指南書ですが、戦争に限らず、敵のいる活動全てに通じる要諦であります。

スポーツ、商売、ビジネス、学校での番長争い、会社での出世争い、兄弟間でのおやつ争い、など競争社会を生き抜く闘う男達には必須の知恵でしょう。

意味は、そのまんまです。己と己の敵を正しく理解しましょうということです。

しかし、正しく・・・理解できている人なんてほとんどいないかもしれませんよ。特にトレードに手を出そうとするような人っていうのは、大抵が自信過剰なわけでしてね。半分は負けるゼロサムゲームで、己には勝つ力があると思うから手を出すわけでね。

ま、普通の人はそんなものです。

「敵を知り己を知れば、百戦して危うきにあらず」の意味することは、自身の弱点や強み、実力(能力、体力、経済力)、感情、考え、状況を理解し、競合の弱点や強み、実力、感情、考え、状況を理解しているのならば、危うい勝負はないということです。百戦して全て勝てるとは言っていませんよ。敵にはお客も含むとより理解し易いかもしれませんね。マーケッティング戦略などは全てこの派生とも言えるでしょう。

さて、マネーゲームに的を絞ってこの教訓を照らしていきましょうか。この言葉の生まれた歴史的な背景まで触れると面白いのですが、それらは解説本に任せまして、言葉だけを切り抜いて掘り下げます。

敵を知る

配当や優待目当てで、定期貯金と同等の位置づけでで長期保有される場合を除き、キャピタルゲインで利益を抜くことを目的とするのであれば、通貨であれ株であれ先物であれ同じマネーゲームといえるでしょう。

そして、マネーゲームは金の奪い合いの戦争です。

長期目線となると、ゼロサムゲームではないプラスアルファを見出すこともできましょうが、短期トレードの土俵で戦っている限りは、やはりゼロサムゲームでしょう。

喰って肥える奴がいれば、その分喰われてやせ細ってしまった奴がいるのです。

先ずは容赦ない金の奪い合いがなされている戦場に己が立っているということを理解しないと始まりません。

そして敵は?

デイトレであれば出来高の大きな銘柄で勝負をすることが多いでしょうが、あなたの闘っている相手を想定しないといけません。

あなたと同じ個人の集合で切った張った金の取り合いをしているのか?

巨大資本がブルドーザーを用意して根こそぎ奪いに来ているのか?

ロボットが目にも留まらぬ速さで這いずり回っているのか?

己が真っ向勝負して勝てる敵なのか?

己に潜む欲であったり、バイアスであったりが、実は一番の敵ではないのか?

出来高、信用取り組み、機関の空売り状況、板読み、チャート、各種テクニカル指標、歩み値などで想定していくでしょうが、その全てが憶測の域を超えません。

中に入ったことのない個人にとっては全て想像の世界です。

もっともそうやって知ろうと努力するだけマシな方で、その手の努力さえしないで、ポンとお金を放り投げているようなことをしている人が結構いそうですが。

でも、いくら努力したところで決して正解は見えないのです。

人殺し目的の実弾の飛び交う戦場に立ちたいと思う人はごく一部のマニアを除いていないでしょう。年収の数倍の金を払うから傭兵になってくれと言われても断るのではないかと思います。

しかし、あなたがデイトレやスイングトレードで戦おうとするのであれば、傭兵となって戦場に立っているのと同じ感覚が必要なのかもしれません。

命という玉の取り合いの代わりに、金という玉の取り合いが行われているのが、あなたが足を踏み入れている戦場です。

あなたが相手をする敵は戦争のプロです。

正しく認識できていますか?

己を知る

己はどうか?

そのような戦争のプロと玉の取り合いをする覚悟がありますか?

準備がありますか?

技術がありますか?

保有株が下がり始めたときに、バイアスの影響を受けず株価の変動している理由を客観的に検証出来ていますか?

アンカリング効果サンクコスト効果は切り離せていますか?

上昇トレンド中の調整ではなくて、大口が売り抜けているからであれば、その後は絶望的な展開かもしれませんよ。

短期トレードという戦場でも、小遣い程度で遊ぶなら話は別という考えもあるでしょう。

そうかもしれません。

しかし、私はおすすめしません。小遣い程度を繰り返すうちにポジポジ病になる可能性が高いです。

そして、コツコツどかんを引き起こす可能性も極めて高いでしょう。

そしてそれを取り返そうとして・・・。

私の経験です。正しく理解するのまでに、かなりの年月と失敗が必要だったようですが。

私は短期トレードをレバレッジかけて数千万円で玉を建ててガチャガチャやっていたときもありますし、小遣い程度でチョロチョロやっていたこともありますが、いずれもおすすめしません。

自己管理がきちんと出来るだけの規律を自己の中に確立出来ていればいいのでしょうが。

己を知った今となっては手出し無用です。私には短期トレードとういう戦場での長期戦で勝ち残れるだけの武器も覚悟も技術もないのです。養分になりたくないのです。カモになりたくないのです。

今でも手を出すこともありますが、過去の自分とは比べ物にならない慎重な打ち方です。

特に入り方が慎重で「もうはまだ」を昔より断然に意識するようになりました。

これは私の結論であって、戦略ですので、他人に押し付ける気はありませんが。

ところで、あなたはきちんと敵を知っているのですか?

そして己を知っているのですか?

本当に・・・知っていれば百戦して危うきにあらずです。百戦してみた結果はどうでしたか?

ここで、ひとつ老婆心でお教えしますが、知っていれば百戦して危うきにあらずとは、知っているから「勝ち目がない」「分からない」と判断して戦に手を出さないという選択も取っているということですよ。

敵の実力と自分の実力を知っているから、勝ち目がない戦は避けるのです。

逃げるべきときは逃げるのです。

百戦して全て勝てるというわけではないのです。

弱小個人でなくて、連戦連勝を重ねてきた強い機関にも勝てないことは沢山あるのです。株とは離れますが、コロナでそういうことを痛感した商売上手も沢山いたことでしょう。

正しく知る

さて、初めに引用した部分に戻りましょう。

敵側の国情、人情、風俗などを熟知し、それに立ち向かう見方を全面的に掌握したつもりでも、それが主観的にすぎ、一面的であればなんの役にも立たぬであろう。なにより危険なのは、「彼ヲ知リ己ヲ知レバ・・・」という言葉だけを知って、その気になってしまうことである。*「孫子の兵法の使い方」 三笠書房 より抜粋

相場で長年生き延びている個人は、きっとこの危険を取り除くことが出来ている個人でしょうね。

商売や職場での立振る舞い、人間関係や男と女のラブゲームなどでも重要な要素です。

思いのほか、簡単なことではありません。

知った気になって、正しく知ってはいないことに気が付いていなくて、カモられる人が圧倒的多数でしょうね。個人投資家の9割が負けるという事実が物語っています。

認めたくないでしょうがね。

私はルールを何度も作っては破ってきましたが、その理由は何故かを漸く突き止めました。

君子危うきに近づかずです。

時間がかかりましたので、その間にかなりの金を奪い取られたものです。

本当に己は知っているのか?敵と己自身のことを。本当に正しく?特に己(保有株も)のことについては、バイアスや感情が入り混じるので、要注意ですよ。

今一度深く、表面だけで知った気になっていないか自分を疑ってかかり、多角的な視点で検証してみてはいかがでしょうか。

あなたは己を客観的に見てどう思いますか?

離れて己の全体像を見れていますか?

他人のことを見ているように?

本当に100%客観的に?

本当に正しく・・・・・・敵を知り、本当に正しく・・・・・・己を知れば、百戦して危うきにあらず。

でも、知った気になっているだけで、誤解して戦場に立っていたとしら・・・。

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