ジョージソロスの名言「まずは生き残れ」はこうして生まれた!

ジョージソロス 投資のヒント
ジョージソロス

ソロスの名言「まずは生き残れ」の背景と投資や人生への活かし方

先ずはソロスをご存じない人の為に、ウェキペディアからの抜粋で簡単に紹介します。

ジョージ ソロス(英 George Soros、1930年8月12日)は、ハンガリーブダペスト生まれのハンガリー系ユダヤ人の投資家、慈善家。

ハンガリー名はショロシュ ジェルジ (Soros György) 。天才投資家として知られ「イングランド銀行を潰した男」の異名を取る。

投資家であると同時に、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで哲学の博士号を得た哲学者であり、政治運動家、政治経済に関する評論家としても活動している。

出典:フリー百科事典 ウィキペディア

ポンドの空売りでイングランド銀行を追い込んだことで有名です。

タイとか後進国の通貨も売りまくって、自身はえげつない程に儲けたこともありました。

売っている金額の桁が違いますので、影響も大きく、現地で投機とは無関係な生活を送っている善良な市民の生活を間接的に追い詰めたことになりますので、批判も多いです。

円を大量に売ったこともあります。

2013年2月の日経新聞には「ジョージ・ソロス氏が昨年11月半ばから円売りで10億ドル(約930億円)を稼いだとウオール・ストリート・ジャーナルが報じている」という記事が載っていました。

さて、本記事ではそんなソロスの名言として知れ渡っている「まずは生き残れ」(英語では、”Survive first and make money afterward”)について深堀したいと思います。

ピンチを迎えたら、生き残ることを最優先とする

「まずは生き残れ」は、投機や投資の世界で、損切をするときの助言として広まっていると思います。

資金ショートしたら何もできなくなってしまいます。

それは、何も投機の世界のことだけではなくて、あらゆるビジネスにおいて通じることだと思います。

個人の責任が問われない大企業に勤めている人や公務員にはピンとこないかもしれませんが、個人商店で頑張っているオーナーにとっては、資金繰りは切実な問題です。

サラリーマンや公務員でも自身の給料から出資して運用している金融商品については、100%自己責任になりますので、資金がショートしたら、そこで終わりです。

さて、そういったことで、「先ずは生き残れ、その後で、金を稼げ」という名言は、一匹狼のギャンブラーに町中華のオヤジ、中小企業のオーナーから公務員の資産運用まで、あらゆるビジネスにとって肝に銘じておかないといけない超重要なことです。

投機の世界での名言だが、背景は少年期にある

このことをソロスが心底痛感しているのは、生き馬の目を抜く投機の世界に入る前の体験が根底にあったと思われます。

彼は、ユダヤ人で、ナチスが大量虐殺を行っていた時代を生き抜いているのです。

夜と霧という本が実家の本棚にありましたが、子供の頃少し読んで怖くなって閉じた記憶があります。

下記「ソロス」は絶版のようで、古本しか売っていませんが、この本の「ブダペストの地下室」という章の一節を長くなりますが、想像力を働かせることによって、学ぶことが多いと思いますので、抜粋します。

 

それからの12か月間で、ブダペストでは40万のユダヤ人が虐殺された。生き残った者たち(ジョージソロスとその家族も含まれていた)は、悪夢のような日々を過ごしていた。

ナチス当局が、ブダベストのユダヤ人協会に強制連行の命令書を配布する仕事を命じると、協会は、その陰惨な任務を幼い子供たちにやらせることにした。(つまり、自分と同じユダヤ人に、死にに行けという通告をすることです)ジョージはその一人だった。

協会の事務所で、彼は人びとの名が記されている小さな紙を渡された。その紙には、24時間分の食料と毛布を持参し、ユダヤ教の神学校に翌日の朝9時に集合せよとの命令が記されていた。

ジョージは父親に助言を求めた。ジョージが配布先のリストを見せると、父親の表情が苦痛にゆがんだ。ナチスは、ハンガリーのユダヤ人弁護士を一斉に拘束しようとしていたのだ!

「その通知を配ってこい」と、彼は息子に指示した。「しかし、これが強制連行の命令だということを一人ひとりに告げることを忘れるな」

ジョージは言われた通りにした。だが、ジョージから通知を受け取っても、ナチスから隠れようとしない者もいた。それが強制連行を意味することを知ってもだ。ナチスがユダヤ人弁護士を連行するように命じたのなら、それが法であり、法には従わなければならない。

「きみの父親に告げてくれ」と一人が言った。「私は、法を守る市民であり、常に法を守ってきた。今になって法を破るつもりはない、と」

戦争の間、ジョージソロスはヤノスキイスという人物(父親がハンガリー政府の役人を買収して得たハンガリーの農業省に勤めるキリスト教徒の役人の息子)になりすました。

父親が買収した役人の職務は、アウシュビッツに連行されたユダヤ系の不動産所有者の財産を没収することだった。

ジョージは仕事で旅行する父と一緒に国中をわたり歩いた。

10代の少年にとって、それは非常に危険なことだった。「もし、正体がばれたら、私は殺されていただろう」のちにジョージソロスは、いかに当時の状況が危険だったかを感じさせない冷めた調子で話している。

戦時中、生き死にに直面した状況下でソロスが学んだ父の教え

いかなる欠点があろうとも、ティヴォドア(父親)はジョージソロスにサバイバルの術について貴重な教訓を与えた。

第一 、危険をおかすことは、悪いことではない。

第一次大戦の後半、毎日のように命を危険にさらしていたので、ティヴォドアは他の状況でも、危険をおかすことを躊躇しないようになっていた。

第二、リスクをおかす際は、すべてを賭けるな。

すべてを危険にさらすべからず。それは、不必要で、実際的ではなく、愚かなことだ。

ナチスから隠れるために、ジョージソロスはすべてを危険にさらさなければならなかった。偽造の身分証明書を受け取ったときには、発覚すれば死を意味することを知らされた。

後年、ビジネスの場ではもっと選択の自由があるようになる。

ビジネスでは、死ぬか生きるかの選択をする必要はなかった。失敗すれば生命まで失うという心配なしに、危険をおかすことができた。リスクをおかすことを楽しむことさえできた。

立ち直る余地さえ残しておけばの話ではあるが。

「致命的なリスクを背負うことなく、生き残っていくことにすごく気を配っている」1992年、成功の頂点に立ったジョージソロスは、テレビのインタビューでそう語っている。

以上、早川書房「ソロス」より抜粋

サチャン的「まずは生き残れ」の解釈

庶民の私たちの手が届かない高価なものをなんでも買えるだけの金と自由を持っているソロスですが、戦時中の少年時代のソロスには、今の私たち庶民が当然のように持っているものがありませんでした。

基本的人権も、安心して眠れる場所もありません。

正しいことを正しいと言うことさえできませんでした。

それだけでなくて、生き残る為に、自分を偽り、何も悪いことをしていない善良な同士に強制収容所行(=殺されに行くこと)を告げ、彼らが収容所にいる間に、同じ民族の財産を没収し、敵に献上する役人の息子になるという腐れ外道をして生き残ってきたのです。

今の私たちが抱えている悩みや不満などとは次元が違う悩みや不満を抱えていました。

死ぬか生きるかの瀬戸際を生き抜いてきました。

敗戦国に生きる一個人という弱者の立場で、戦争を生き抜いてきたことが、金融マーケットという形を変えた戦場で生き残り、勝者となることを叶えたような気がします。

生き残る為に躊躇うことなく、方針転換したりする際に役立ったのではないでしょうか。

彼がナチスの迫害を受けていた時に直面していた世界は、理不尽だらけであり、倫理や道徳も踏みにじられ、昨日まで通じていた常識も通じなくなっていたことでしょう。

そして、もし、その価値感や考えに固執して、行動を変化させられていなければ、ソロスは生き残ることが出来なかったと思います。

その後で、金を稼ぐことも出来なかったのです。

株式市場も為替の市場もトレードをするのであれば、そこは戦場です。

理不尽だからといって、力のない個人が、流れに逆らって立ち向かったところで、簡単に殺されてしまうでしょう。

生き残る為には自分を「変える」しかない時もある

上記の抜粋の中で、ソロスに強制収容所行きのことを告げられて、(自分は弁護士だから)法を守るべきだと言って、逃げるのを断った人がいました。

果たして、その人は、その後どうなったでしょうか?

せっかく逃げるチャンスをもらったのに・・・。

弁護士として、法を守ったのは立派なのかもしれません。しかし、その法は命に代えてでも守るべき尊いものだったのでしょうか?

生き残ることが出来なければ、幾ら金があろうと、幾ら能力があろうと、幾ら人格者であろうと、何もできません。

相場の世界やビジネスに限定して話せば、資金ショート=死ですが、それ以前に自分自身が生き残っていなかったら、投機もビジネスもできません。

心身の健康は、生き残る為の土台ですよ。

ソロスは失敗も数えきれないほどマーケットで経験してきています。

それでも生き残れているのは、巨額の損切を資金ショートする前にしてこられたからです。

相手を変えることが出来ないのであれば、自分を変えるしか生き残れないときがあります。

それが出来たのは、少年時代のサバイバルの経験が下地にあって、その時代の経験と比べれば、大金であろうと、命まで取られるわけではないと考えられて、失ったところで、大したことがないと思えたのではないかと想像するのです。

そして、命を失ったら何も出来ないことを知っているように、金融マーケットでの命は資金であるということも体を流れる血のレベルで理解しているから、生き残ってこられたのだと思います。

金融市場では理不尽になぎ倒されることが多々あります。

労働市場でだってそうです。理不尽なんてまるで当たり前のように直面します。

昨今は、〇〇ハラスメントと騒がれて、減少したのかもしれませんが、あなたの見えていないところで、幾らでも起こっています。

そこで、あなたはどうするのでしょうか?

例えばこの記事 機関による踏み上げで追証発生|東芝粉飾決算祭りでの悲劇 の中の正義感の強い男はどうなったでしょうか?

投資投機の世界では、決算が良いのに理不尽に機関に売り浴びされることもありそうです。

上がると推奨されて買ったのに、逆にどんどん下がっているなんてこともありそうです。

決算は悪いのに、各種指標は高すぎるのに、空売りしたら、どんどん株価が上がっていくなんてこともありそうです。

自分のポジションを変えることが出来ないで、強制退場になってしまっては、次の手が打てませんよ

サラリーマンの世界だってそうです。

仕事ができないのにどんどん出世する奴がいて、そのうえ、そいつが自分の上司になることもあるかもしれません。

頑張って作った成果を横取りされて、正しく評価されていないと思えることもあるかもしれません。

努力とアイデアで私だから作れた成果で会社が儲かっているのに、まるで出世に繋がらない。なんてこともありそうです。

理不尽だらけですよ。

でも、いちいち怒っていたらどうなりますかねぇ?上司や同僚に噛みついていたら、仕事がし辛くなって、居心地が悪くなりませんか?

逆にまともに相手をする価値もないバカヤローの評価なんてのを気にしすぎて、残業に次ぐ残業やパワハラや暴力に耐えて、限界を超えて、心身の健康が維持できなくなったらどうなりますか?

相手を変えられないならば、自分を変えるというのはどうでしょうか。

職場で生き残る為に、理不尽をスルーできるように自分の受け止め方を変えたり、文字通り生き残る為に職場を変える場合もあるでしょう。

関連記事:孫子の兵法「勝算がなければ戦わない」競争社会で生き抜く鉄則

目先の感情も大事でしょうが、自分のことを考えましょうよ。

自分の将来のことを。

先ずは生き残る。その後で、金を稼げばいいじゃないですか!

人生で追い詰められている人、職場や相場で追い詰められている人、理不尽に憤っている人もいることでしょう。

辛いと思います。

関連記事:いいことばかりはありゃしない|RCサクセション

でも、きっとジョージソロス少年が父と共に生き残る為に逃げていたときよりは、逃げ道も沢山残されているのではないでしょうか?

先ずは生き残ることを考えてください!

一旦撤退して、立て直したその後で、実力さえあれば、チャンスは掴めることでしょう。

生き残る為にバイアスを知っておく

投資のヒントということで、「まずは生き残れ」を損切を促すときのエールとしましょう。

でも、頭ではわかっていても出来ないときってありますよね。

金融マーケットで生き残る為の施策が打てないとき、本能に刻まれた各種バイアスが邪魔していることがあります。

本来生き残る為のバイアスなのですが、金融マーケットは自然界におけるサバイバルには存在しないものだからです。

だから、損切とか、本能に逆行することを行うのは難しいのです。

以下の記事を参考にしてもらえればと思います。

損失回避バイアスの考察|大きく負けて小さくしか勝てない理由

サンクコストの呪縛を断ち切れ!!

株式投資に潜むアンカリングの罠|誤った判断と利用する機関

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最後に、英語になりますが、ジョージソロスのドキュメンタリー動画を参考に紹介します。

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